法人における交際費は、措置法61条の4第3項においてその一定額が損金の額に算入されませんが、法人税法上、交際費と福利厚生費・広告宣伝費・会議費等との区分はどこで引かれるものなのでしょうか?
この問いかけには明確な答えがなく、また、その答えがないために、過去に様々な税務解釈がされてきています。各法人個別の取引形態や業界の慣習などにより、同じような支出であってもあるものは交際費として取り扱われ、あるものは交際費として取り扱われないというのが実情であるような気がします。
この様な曖昧な問題を考える上でのひとつの解釈指針として、有名な判例があります。税務の世界で一般的に「萬有製薬事件」と呼ばれるものです。
「萬有製薬事件」の要旨
製薬業を営む期末資本金2億円のB社は、医薬品を販売している大学病院の教授等(教授、准教授、講師、研修医、大学院生、医療に直接携わらない者を含む)から論文の英文添削の依頼を受け、これを海外の添削業者に外注する際に、教授等から徴収していた金額の3倍以上の金額をその外注業者にしはらい、結果的にその差額をB社が負担している。教授等から徴収している金額は国内の添削業者に支払う場合の金額とほぼ同等と認められる。
このような取引となった経緯として、当初は、学術研究に対する支援、奨励という意味から添削をB社内部において引き受けていたが、次第に外注に移行していったが、移行当初の外注費は安価であったため、利益が生じていたものが次第に外注費が高騰したという経緯がある。また、教授等はB社が外注費の差額を負担している事実を把握していなかった。
このような取引条件のもと、国税側はこの外注費を交際費と認定したが、B社はこれを不服としその取り消しを求めた。
裁判所の判断(東京高裁 成15年9月9日判決)の要旨
結論:
この外注費支出は交際費に該当しない。(教授等から徴収している金額は益金・収益として計上する必要はある。)
根拠:
交際費等に該当するためには以下の3要件を満たす必要がある
1、支出の相手方・・・事業に関係ある者であること
2、支出の目的・・・事業関係者等 の間の親睦を深めて取引関係の円滑な進行をはかること
3、行為の形態・・・接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること
が、本件は その支出の目的が、親睦の度を密にし、取引関係を円滑に進めるという接待等の目的とは認められないとともに、行為の形態として、それ自体が直接相手方の嗜好や歓心を満たすものではなくむしろ学術研究に対する支援という性格を帯びることを考慮すれば、接待、供応、慰安、贈答その他これに類する行為と判断することはできない。
つまり、3要件のうち、2要件を満たさないため、当該支出は交際費には該当しない。
判決の与える影響:
この判決を受けて、国側は控訴せず、高裁で確定しました。この判決以前は「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」の範囲が限りなく拡大解釈される傾向にありましたが、この判決により交際費課税の範囲の拡大傾向に歯止めがかけられた結果となっている様子です。
参考 租税特別措置法第61条の4第3項
交際費等とは、交際費、接待費、機密費、その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答、その他これらに類する行為のために支出するものをいう。



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